第2回 「適切な自己管理・治療選択で糖尿病合併症の予防を」
厚生労働省が発表した2002年の統計によれば、糖尿病患者数は740万人を数え、予備軍を含めると1620万人になるという結果が発表されました。
40歳以上の6人に1人が糖尿病という、まさに国民病的様相を呈する中でさらに問題なのが合併症。網膜症(失明)、腎障害(透析)、神経障害(しびれ、立ちくらみ・インポテンス)に加え、最近では、死につながる心筋梗塞、脳梗塞、そして足の潰瘍・壊疽も増加しています。
糖尿病が一因で起きる脳血管障害、心血管疾患は日本人死亡原因の30%にもなります。糖尿病単独でも死因の第7位に顔を出しています。
糖尿病性合併症のほとんどは動脈硬化が原因で起こってきます。動脈硬化は血管の病変ですから、頭から足先までどこにでも出現する可能性があります。また知らないうちに進行するのが特徴です。調査によれば、外来患者さんの網膜症出現頻度は、診断後5年では5%に過ぎませんが、10年後には30%、20年後には70%にも達します。腎臓、神経の障害も平行して起こってきます。「定期的に通院しているのに・・・」と、あきらめムードになるのも無理からぬ話。
これに対して、血糖コントロールをきちんと行えば、合併症の出現頻度を少なくできることがこの10年間でわかってきました。1型糖尿病患者さんを対象に調査したところ、インスリン注射の回数を増やし、血糖コントロールを厳密に行った患者さんは、そうしなかった患者さんに比べて10年後の網膜症出現率が60%から10%まで減少したのです。
血糖の厳密なコントロール、それを達成するためには、その時々の病状に適した治療を、主治医といっしょに選択し、実行してゆくことが大切です。薬が変わらないのは病状が安定しているから、といった思い込みはやめ、今の自分にあった治療選択をしてゆきましょう。
ところで、合併症の予防・治療のためには、さまざまな検査が必要となります。例えば、頭部MRI、眼底検査、頚動脈超音波、心超音波、胸部レントゲン、心電図、神経伝導速度、尿の成分解析、脈波伝播速度、といった検査に加え、血圧やコレステロール値のフォロー、そして膵臓自体の評価(インスリン分泌機能)まで加えると、20項目にも上ります。
漫然と同じ検査が繰り返されていないか。必要な検査が抜け落ちていないか。主治医と相談し、必要な検査を計画的に実施してゆくことで、合併症の早期発見と予防につなげて行きたいものです。
当クリニックでできる検査項目:血液・尿検査、心電図、胸部レントゲン、脈波伝播速度(動脈硬化判定)、24時間心電図、24時間血圧、ベッドサイドでの神経学的検査など。他の検査は提携病院(名古屋大学医学部付属病院、名古屋第二赤十字病院、聖霊病院、東海病院、名古屋記念病院)へご紹介いたします。
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