第5回 「インスリンを測ってみよう」
メタボリックシンドロームという言葉が目に付くようになりました。致死的な動脈硬化性疾患を引き起こす危険因子が集積した状態につけられた呼称です。
具体的には、高インスリン血症、肥満(特に内臓肥満)、脂質代謝異常(中性脂肪上昇・HDLコレステロール低下)高血圧、血糖上昇などが複数集積すると、動脈が硬く、また内腔が狭くなってきます。
その結果必要なだけの血液が流れず、心筋梗塞に代表されるような虚血性心疾患という重い病気を引き起こしてしまいます。危険因子をたくさん持つほど、虚血性心疾患の発症頻度が高くなってきます。
調査によれば、十年前と比較して、三十歳から五十歳男性に中性脂肪の著明な増加が認められ、肥満が増えていることが指摘されています。また五十歳以降の女性でコレステロール値上昇が顕著になってきています。昨年の報告によれば、糖尿病患者は隠れ患者も合わせて千六百二十万人と言われています。
調べていくと、こうした病態のおおもとに、インスリン抵抗性といった状態が存在することがわかってきました。
インスリンが血糖を低下させるのはよく知られたことですが、そのほかに、肝臓および脂肪細胞で脂肪やたんぱくの合成を促進し、血管ではナトリウム貯留や細胞増殖を促進するなど先に述べた脂質代謝や血圧調整にも深く関わっています。
遺伝的な背景に加えて(詳細はまだ不明)食べ過ぎや運動不足・不規則な生活習慣などが加わると、体の中でインスリンの働きが極端に悪くなり、それを補うためにインスリン量がどんどん増えてくるのです。
これを高インスリン血症、インスリン抵抗性の悪化と呼び、メタボリックシンドロームの一番重要な因子として注目をされているのです。
空腹時のインスリンを一度測定してみましょう。高インスリン血症は、先に述べた、高血圧、高脂血症、糖尿病が現れる前に出現し、症状が現れる前の黄色信号として皆さんに警報を発します。一通りの血液検査に加え、ぜひ一度自分のインスリンレベルをチェックしてみてください。
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