第7回 「糖尿病性腎症」定期チェックで早期の発見対処を
高血糖状態が長年続くと、細小血管障害といって腎臓や目、神経などを養う細い血管の障害(硬化)が進行し、それぞれの臓器に特有な障害が出現してきます。
中でも腎臓は体の老廃物を排泄する大事な臓器です。腎臓には老廃物を排泄するほかに、体の水分を調節する働き、ナトリウムやカリウムなどミネラルを調節する働き、血液を作る働き、血液を中性に保つ働きなどがあり、どれがかけても体にとってダメージとなります。
血糖コントロールの不良な状態が 5 〜 10 年続くと腎臓の血管が動脈硬化を起こし、先に述べた働きが低下してきます。その初期の障害を見つけるマーカーがおしっこの中の「微量アルブミン」です。
普段腎臓は私たちの体にとって必要な物質は外へ逃がさないようにしていますが、いったん働きが低下するとそうした大切な物質がおしっこに溶けて漏れ出していきます。
「微量アルブミン」は体にとって必要なものなのですが、腎障害の初期からおしっこに溶けて漏れ出していく代表選手です。腎臓の障害を早く見つけるために、糖尿病の患者さんは「微量アルブミン」がおしっこに漏れていないかどうかを定期的にチェックする必要があります。
当クリニックでは 6 ヶ月ごとに「微量アルブミン」をチェックして早期の腎機能障害発見に努めています。腎障害は知らないうちに進行していきます。
2002 年の厚生労働省の調査によると糖尿病が強く疑われる人は 740 万人、腎機能障害を持つ人はその 3 〜 4 割、 220 〜 290 万人と推定されています。人工透析に至るケースも増えており、日本透析医学会の統計によれば、 2004 年に新規透析導入した患者 34000 人の 41 %を糖尿病性腎症が占めています。
この糖尿病性腎症の発症や進展をおさえるためには血糖管理以上に血圧の管理が重要です。糖尿病患者では降圧目標を 130/80 未満とすることが推奨されています。
薬剤選択のコンセプトとしては、腎障害のおおもととされているアンジオテンシンU(レニンアンジオテンシン系)活性の抑制を主眼とし、そのための薬剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬:ACEI、アンジオテンシン受容体拮抗薬:ARB)を腎障害発現時から使用します。
早期からの薬剤使用で、血糖・血圧を厳格に管理すれば微量アルブミンや尿たんぱくを減少させることができる、すなわち正常機能を取り戻すことができることが期待されており、腎障害患者にとって福音となっています。
日頃の通院の中で、早期腎障害発見のマーカーである「微量アルブミン」のチェックをし、基準値内にあることを確認する作業を続け、そして基準値を超えたら、腎障害進展防止のための生活習慣への介入や薬物使用についてドクターと相談していくことが大事です。
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