「名古屋大学医学部プライマリ・ケア実習」
名古屋大学医学部5年 井上 祥
今回の実習先である渡辺内科クリニックでは、渡邊先生の院内、院外多岐にわたる活動を見学させていただきました。 そのため日常診療から予防など公衆衛生に関わる幅広いヘルスケアサービスに触れることが出来ました。 院内実習では主に、糖尿病で定期的に通院されている患者さんへの医療面接をさせていただきました。 3日間計7名の患者さんにインタビューさせていただきましたが、うち4名は後期高齢者の方でした。多くの患者さんは糖尿病以外にも慢性疾患を抱えており、またメンタルヘルスに何らかの問題点を持つ方もみえました。 そのため多岐にわたる患者さんの話から、少しずつ焦点を絞って話を聞いていく技術の必要性を痛感するとともに、渡邊先生が世間話をされているように見えながら必要な情報をしっかりと聞き取られおり、今後自身の医療面接の参考にさせていただこうと思いました。 またクリニック専属管理栄養士の方の栄養指導を見学させていただきました。 クリニックでは、患者の食事内容を携帯で撮影してもらい、それをチェックする試みが行われており、またその指導方法の効果を管理栄養士が分析し、学会で発表するということが行われていました。 糖尿病に限らず、予防の視点からも食事指導は重要であり、まさに継続的で地域、家族を視野にいれたプライマリ・ケアにとって必須の活動であると感じるとともに、院内スタッフの育成という視点を持って活動する、渡邊先生の経営者としての姿勢を学ぶことができました。 その他、糖尿病新薬の治験コーディネーターの方につき、治験の様子を見学させていただくことで、治験に参加される患者さんの思い、良いデータを収集するために服薬状況の把握などを厳密に行うコーディネーターの方の仕事内容に初めて触れることが出来ました。 院外では、有料老人ホームへの訪問診療同行、在宅訪問診療同行、市医師会ミーティングの見学、そして名城大学、近隣保育園での予防接種に同行させていただきました。 有料老人ホームへの訪問診療では、現地スタッフとの情報共有をいかに効率的にするかが工夫されており、訪問診療では特に多職種との連携が必要であることを実感しました。 市の医師会では予防接種事業などについての話し合いが行われており、実際の地域でのヘルスケアプログラム策定に大きく関わっている様子が伺えました。 3日間という短い時間の中、渡邊先生の医療的な働きはもちろん、それを可能にする多職種との連携能力、組織の長としての経営、人材育成能力、また行政、医師会と関わりながら地域全体のヘルスケアの向上に関わる大局観を見させていただきました。 将来クリニックで地域のヘルスケアに関わっていきたいと考えている私にとって、今回の実習は今後学んでいくべきことに多大な示唆を与えていただいたものとなりました。 最後にこの場をお借りしまして、私にこのような機会を与えてくださった渡邊先生をはじめとするクリニックの皆様、患者さま、名古屋大学総合診療部のみなさまに御礼申し上げます。