「プライマリ・ケア実習を終えて」
愛知医科大学医学部5年生 森口 明宣
今回お世話になったわたなべ内科クリニックにおいて、最も印象的であったのは「クリニックという空間の中でスタッフ全員が一丸となって活動されている」ということでした。 今年の春から今までは、大学病院で各科を順番に回って実習・見学をしていましたが、そのような大規模病院は巨大なコミュニティの中で各専門分野に特化した人々がそれぞれの仕事を行い、互いにコンタクトし合うことで、一つのシステムを維持・強化していくという構造であるように思います。 対してクリニックなどの比較的小規模な医療現場においては、基本的に少数の分野の中で、厳選されたスタッフが、お互いに主張し合いながら問題に対処していくという構造があり、今回の実習においても、医師、看護師、栄養士、事務の方々が何かあるたびに意見交換しながら診療に取り組んでいらっしゃいました。 そのためもあって実習中は医師に限らずスタッフすべての方々に指導者として接していただき、診療だけにとどまらずその他のお仕事についても区別せず指導を受けることができました。 実習は午前8時より始まりましたが、まずはクリニックのトイレ掃除を行います。 その後午前の外来に移り、その際にあらかじめ選ばれていた患者さんのインタビューをさせていただきました。ここでの質問は、大学病院の外来で行う予診などの内容とは異なり、例えば「今の生活で気を付けていることはあるか」、「治療開始の前後でどのように意識が変化したか」といったような内容でした。 生活習慣が大きく影響する糖尿病内科らしい質問であり、またこのような質問が患者にとって自身の気持ちを話す機会になるということで、患者の気持ちにより密接したプライマリケアの場であるクリニックらしい質問でもあり、非常に新鮮な感覚でした。 午後からは院外へ出て、保育園と神社での訪問ワクチン接種に同行しました。 クリニックは大学病院のような「患者が集まってくる場所」というよりは「地域全体の健康状態を管理する場所」であり、地域内で時には自分から出向いて治療、診察、予防的処置を行ったりします。自分から訪問して医療行為を行う意味としては、その方が迅速に物事が進み時間効率が良いという理由だけでなく、実際に出向いて施設などを見ることでその場における生活についてのアドバイスなどを行うことができるという側面もあります。 アドバイスをすることで地域の人々が医療に対する意識を高め、自分から変化を生み出していくようになることが狙いではないかと思いました。 地域レベルでの健康増進に関わる職業として、地域内での他のコミュニティにすすんで干渉し、全体的な医療のレベルを上げていく必要性を感じました。 今までにもクリニックなどにお邪魔して見学、学習する機会はあったものの、今回のように診療開始から診療終了までにわたっての活動を見学させていただき、また自分も参加して、その役割について勉強する機会は初めてのことでした。 各規模、各機能別の病院にそれぞれどのような意味があり役割があるのかを知る上でも非常に有意義な実習になったと思います。 本当にありがとうございました。