「プライマリケア実習をおえて」
名古屋大学医学部5年 西影 星二
今回、プライマリケア実習で昭和区のわたなべ内科クリニックで3日間実習をさせていただきました。3日間でクリニックにおける外来診療から、在宅医療、医師会の例会まで見学させていただきました。 都会におけるクリニックにおける外来の現状と、なすべき役割、今急速に需要が増している在宅医療の実際、そして地域の医師会がどのように地域の医療を支えているのかを学ぶことができ、非常にためになる実習でした。 外来診療に関してですが、わたなべ内科クリニックは糖尿病に特化したクリニックで、患者さんのおよそ7割以上が糖尿病患者でした。2診体制で診療を行っており、予約で来られる方が多く、スタッフ間の連携が非常にスムーズなため、待ち時間も少なくかつ大学病院と遜色のないレベルの医療を提供しているように感じました。ほぼすべての患者さんが医師を始めとしたスタッフと良好な関係を築けているように見えました。 私は外来や検査の見学、また治験に参加されている方がどういう流れで治験に参加されているのかを見学させて頂きました。初診の患者さんのインタビューもさせていただき、糖尿病の方がどういう風に生活していらっしゃるのか、何に気をつけているのか、何が心配であるのかなどを学ばせて頂きました。 外来診療において特に印象的だったのは、検査機器の充実と治療の年間計画まで立てていることです。血糖、ヘモグロビンA1cは受診当日報告し、リアルタイムで治療に反映させていました。呼吸動態により代謝を図る機器も設置し、その結果も踏まえて管理栄養士による食事指導もしており食事指導に説得力をもたせていました。 わたなべ内科クリニックでは1ヶ月に1回の受診を基本として糖尿病治療を行っており、そういった機器による検査や食事療法の定期的な指導などを盛り込んだ年間治療計画表を年の初めに患者さんに渡してそれに基づいて治療を行っていました。年間計画を渡すことで患者としても治療計画は明確になり、治療がより生活の中に溶け込んでいくとても良い方法だと非常に感嘆させられました。 在宅医療は、個別訪問から、グループホーム回診形式の診療と特別養護老人ホームの訪問診療を見せていただきました。午前の診療の後、いくつかのグループホームを回り、移動中にも調子を崩された方からの連絡があれば柔軟に対応していました。グループホームや特養老の看護師や薬剤師としっかりと情報交換を行われており、また特養老とクリニックの電子カルテがリンクしていて、薬の処方や患者の状態の把握ができるようにするシステムがしっかりと構築されていることに感心しました。自宅への個別訪問診療においても、その場で薬が必要になり、呼吸器が必要になった際に、近くの薬局や医療機関と連携してその環境を整えて医療を行っていました。 渡邊先生より「在宅においては、なんでも治療すればいいわけではなく、患者さんの状態や希望にあわせて、患者さんが生活できるようにすることを主眼とした医療をおこなうことが大切である。」と、教えていただきました。 外来診療においてもそうでしたが、一貫して患者さんの話にしっかりと耳を傾け、患者さんの立場にたって不安を解消してあげるよう努めて接していらっしゃる渡邊先生の姿勢がとても印象的でした。 「傾聴することで患者さんの不安を解消し、傾聴そのものも医療になりうる。」という言葉も印象的でした。また、病院ではなく在宅での看取りという社会の流れの中で90人ほどのキャパシティーの特養老を6人ほどの看護師でまわして支えていたりと、在宅医療をする人間に今後ますますかかっていく負担の大きさを感じました。非常に質の高く、システム化された都会における在宅医療を感じると共に、今後人員の確保なども含め支える側の人間の負担を軽減していく環境整備をしていく必要があるとも感じました。 全体としては、糖尿病治療という生活習慣病の治療や在宅医療を見学し、急性期の医療だけでなく、生活面でも長期的に患者さんに寄り添い、いかにして生活をよくしていくかに重点をおく慢性疾患や在宅の治療が、社会においていかに重要で、また必要とされているかということを感じました。 わたなべ内科クリニックは、同じビルに眼科、精神科・心療内科、整形外科、循環器内科、歯科などがはいっており、様々な医療機関と連携することで、クリニックでありながら非常に専門的で高いレベルの医療を実践、実現しており、医療における連携の大切さというものも改めて学ぶ機会となりました。 最後にこの場をお借りしまして、私にこのような機会を与えてくださった渡邊先生をはじめとするクリニックの皆様、患者さま、名古屋大学総合診療部のみなさまに御礼申し上げます。3日間ありがとうございました。